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Vol.9 2012年8月『CAT-BOND〜災害リスクの外部移転』


地震保険の状況

 2012年8月29日、内閣府はマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大で死者数32万3,000人、家屋の全壊・消失数238万6,000棟に及ぶ被害推計を公表しました。この被害推計は、世界的にみても甚大な規模であり、今後の防災対策(ソフト面、ハード面)の基礎データとなります。
 災害に対する備えの一つに地震保険があります。地震保険は1966年に創設され、その保証額の制約から契約率は低迷していました。2012年8月24日、損害保険料率算出協会は2011年度の火災保険契約のうち、地震保険の付帯率が初めて50%を超えたとリリースしました。特に昨年3月の東日本大震災で被害の大きかった東北3県の付帯率の上昇が顕著で、宮城県では81%と大幅な付帯率となりました。
 しかし、世帯付帯率は2011年度末でも全国平均で26%とそれほど高くはありません(図1)。この理由としては保険料率の割には上限金額が主契約(火災保険)の30〜50%で、総額でも5千万円以内という制限が影響していると考えられます。
 加入率は高くないとはいえ、地震保険の契約残高は全国合計で119兆円と多額になっており、地震の規模や発生地域によってはその支払額は相当なものになるものと考えられます。また、前提として地震保険は居住用資産を対象として官民共同で運営されている特殊な保険で、保険金総額は6兆2千億円と上限が定められており、そのための支払基金が積み立てられています。また、基金に不足が生じた場合には、国債発行により支払原資が確保されることになっています。

図1 都道府県別地震保険世帯加入率推移
図1 都道府県別地震保険世帯加入率推移


事業用資産の地震対策

 事業用不動産にはこのような保険が適用されないため、独自の「保険」を付保する事例も発生しています。たとえばディズニーランドを運営するオリエンタルランド社(OLC)、JR東日本の地震リンク債券などが有名です。
 1999年に発行された総額2億ドルのOLCの地震リンク債は首都直下型の地震に備えたもので、施設と震源との距離、震度のみによって元本償還額が異なってくるというものです。支払根拠はトリガーとなる地震の発生のみであり(図2)、OLCには膨大な作業を要する損害額の証明が不要となっており、迅速な「保険金」の支払いが受けられることになっています。このような仕組みを、CAT-BONDと総称しています。

図2 OLCのCAT-BONDのトリガーイベントの規模と範囲
図2 OLCのCAT-BONDのトリガーイベントの規模と範囲


CAT-BONDの仕組み

 CATとはCatastropheの略称で「災害債券」と訳されます。多数の保険契約を集めてリスク分散を図る通常の保険とは異なり、案件毎にスキームを作っていく「オーダーメイドでの保険」と考えればわかりやすいでしょう。典型的には図3のようなSPVを介在させてファンドを作り、それを資本市場で引き受けてもらいます。
 つまり、損害リスクに対してプレミアムを支払って、外部(資本市場)に移転するということです。全世界の資本市場は保険市場の100倍もの資金量がありますので、発行条件によってはリスクの引き受け手はいくらでも存在するのです。

図3 CAT-BONDの仕組み模式図
図3 CAT-BONDの仕組み模式図


CAT-BONDの発展

 米国では、1992年に保険金支払額が2兆円となったハリケーン・アンドリューによる損害により、多くの保険会社が「災害保険」から撤退しました。ハリケーンや地震は一度の損害額が多額であるため、「大数の法則」が機能せず、契約される物件の場所が危険度の高い地域に集中するという「逆選択」が発生するという保険成立の前提条件が成立しにくく、そこでCAT-BONDという仕組みが発展しました。1999年には10億ドルに過ぎなかったCAT-BONDの発行額は2007年には138億ドルと急増しています(図4)。

図4 米国におけるCAT-BONDの発行額推移
図4 米国におけるCAT-BONDの発行額推移


 また、金融技術に進んだ米国ではCAT-BONDのトリガーの指標となるPCS (Property Claims Services)を原資産としたCAT-Optionの市場がNYMEXやCMEXに開かれています。PCSとは地震・ハリケーン・洪水について区域単位に集計して保険金支払い予想額を指数化したもので(図5)、これによって客観的なプライシングを可能にしています。

図5 PCSの区域単位の例
図5 PCSの区域単位の例
PCS(Property Claims Services )HPより引用


CAT-BONDへのNASAデータの活用

 アースアプレイザルでは、NASAのスペースシャトルによる数値標高モデル(DEM=Digital Elevation Models)であるSRTM(Shuttle Radar Topography Mission)の解析による災害リスク分析について、現在検討を進めております。SRTMのメッシュは30mないし90mであることから、郊外にある工業団地や事業用地はもちろん、市街地においても適用は可能です。
 SRTMは、図6に示す赤色の範囲を除いた、全世界の95%の人口が居住するエリアをカバーしているので、世界中に拠点を有するグローバル企業の事業用地の災害危険度を、国や地域による標高、地形データの多寡によらず、同一の指標において判定できると考えます。
 また、SRTMの解析に基づいた災害リスク評価の仕組みを構築することで、CAT-BONDのトリガーイベントの検討のための有効なデータとして活用できると考えます。これを用いて、単独の拠点のみならずポートフォリオとしてみた拠点群の災害リスクを評価し、そのリスク評価を基にCATを発行することも可能となると考えられます。

図6 SRTMのカバー範囲
図6 SRTMのカバー範囲
NASA Jet Propulsion Laboratoryより引用

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発行  株式会社アースアプレイザル



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