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Vol.10 2012年9月『地盤液状化スクリーニング調査』に基づく液状化リスクの把握と対応


はじめに

 2012年9月15日〜17日に大阪府立大学で行われた日本地質学会大阪大会におきまして、弊社地盤災害チームの横山芳春と技術顧問の中村裕昭が『「地盤液状化スクリーニング調査」による不動産の取得検討時に可能な液状化発生リスクの顕在化』のタイトルで講演を行いました。講演は9月16日に『環境地質』セッションにて行い、多くの専門家をはじめとした皆様にご聴講頂くことができました。
 講演の内容は、EA Web Library Vol.1でお知らせいたしました「地盤液状化スクリーニング調査」につきまして、消費者(戸建て住宅施主)と企業(不動産・建設業者)・専門家等との認識のギャップ、ハザードマップの現状と課題について解説したのち、「地盤液状化スクリーニング調査」の手法、リスク情報の活用方法について講演を行いました。講演では消費者の目線を想定いたしましたが、リスクの把握および対応における方向性につきましては、法人・企業におきましても同様の流れにあるものと考えられます。

図1 消費者と企業、専門家・行政機関におけるギャップ
図1 消費者と企業、専門家・行政機関におけるギャップ


講演の背景と趣旨

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震においては、首都圏でも東京湾岸や利根川低地等で液状化現象による被害が発生しました。地震後には、行政が発行した液状化マップが液状化発生リスク(以下、リスクと略す)を十分に評価できていなかった例、判定結果の認識相違による「液状化マップが外れた」との新聞報道、浦安市等における液状化による家屋の不等沈下被害を対象とした係争、さらに沈下した家屋の修正工事に伴う対象物件のみならず近隣住民とのトラブル等、様々な事象事態が発生しました。図1は、千葉県我孫子市における、小規模建築物の液状化による不等沈下の被害例です。建物に10度以上の傾斜、また1m以上の不等沈下があることが明確です。

図2 小規模建築物の液状化被害の例
図2 小規模建築物の液状化被害の例


 これらは、企業(不動産・建設業者)、専門家・行政等と消費者の間における情報・リスク認識の格差に係る、潜在的な課題が露呈したものと捉えることができます。リスクを知らずに不動産を取得することで、地震動による直接の建物倒壊がなくとも、液状化によるライフライン破損や建物の傾斜のために居住不能となってしまう可能性が生じます。
 このような事態を受けて、弊社では不動産取得後の現地調査の段階のみならず、取得を検討する段階においても対象地ピンポイントのリスクを把握できる簡易なツールとして「地盤液状化スクリーニング調査」を開発したことを学会で講演いたしました。

液状化マップによるリスク判定の課題

 液状化マップは地域の液状化リスクの概略を把握する際には有効な情報源の一つですが、以下の課題もあります。
 例えば250〜500m四方のメッシュ単位で作成されていること、メッシュ毎に必ずしも必要な情報が揃っているとは限らないこと、異なる地形・地盤条件を有するメッシュの情報が画一化されている場合があることなどから、必ずしもピンポイントの不動産のリスク評価に適したツールとはいえません。
 主な都府県の液状化マップの仕様を表1に示します。メッシュのサイズ、液状化判定の方法、想定地震について、全く同じ仕様が存在しないと言えるほどの違いがあることが明確です。また、作成する自治体ごとに、評価方法およびアウトプットとなる評価区分も異なっているため、消費者・企業が判断に用いる際、また異なる地域のマップを比較しようとする際には、利用しにくい状況にあります。
 したがって、液状化マップの情報を消費者・企業が正確に把握できず、マップに示された意図とは異なる判断をしてしまうケースも想定されます。

表1 主要都府県の液状化マップ仕様
  項目








メッシュ
サイズ
500m      
250m以下  
     
液状化
判定法
FL<1.0                
PL>15
PL>15となる
加速度で評価
           
揺れやすさを加味            
液状化履歴を加味              
想定地震 想定
地震
海溝型        
内陸直下型      
全域に一律の
地震規模
         
メッシュごとに
最大規模地震規模
             

ピンポイントのリスクを把握・対応できるツールとして

 「地盤液状化スクリーニング調査」は、ピンポイントにおけるリスク情報をご提供できることから、消費者がリスクの有無を不動産取得前に把握して頂き、それをもとにリスク対応を協議することができると考えます。つまり、消費者と企業・専門家等における双方向のリスクコミュニケーションツールとなるものと位置づけられます。
 消費者が取得検討中の不動産においてリスクがあると認識した場合、必要に応じたリスク対応策として回避(取得を見送る)・低減(詳細調査→対策工事等)・移転(地震補償・地震保険等へ加入)・受容(利便性等を優先して取得する。対策費用は積んでおく)等のリスクマネジメントを行うためのツールとして期待されます(図3)。

図3 地盤液状化スクリーニング調査に基づくリスク対応策の一例
図3 地盤液状化スクリーニング調査に基づくリスク対応策の一例

 以上のことから、今後弊社の取り組みとしては、お客様に災害リスクを正確にお伝えできるツールの開発とともに、リスクマネジメントと対応したサービスについても順次サービスを展開できるよう、研究・開発を進めて参ります。

 なお、本講演の講演要旨は、以下の要旨集に掲載されています。
 横山芳春・中村裕昭:「地盤液状化スクリーニング調査」による不動産の取得検討時に可能な液状化発生リスクの顕在化.日本地質学会第119年学術大会講演要旨,R-17-O-6.

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TEL: 03-5298-2151

発行  株式会社アースアプレイザル



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